犬の首輪とハーネス、どっちがいい?|答えが「両方」になる理由と、選ぶときの3つの基準【2026年8月版】

犬の首輪とハーネス、どっちがいい? - 犬ごはんナビ

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結論:どちらかを選ぶ問題ではなく、「役割を分ける」のが答え

先に結論を書きます。この質問には、実は「両方つける。ただし役割を分ける」という答えがあります。

  • 首輪=身分証として常時つけておくもの。鑑札・注射済票・迷子札をつける場所であり、法律上つけておく義務があります
  • ハーネス=散歩でリードをつなぐもの。首への圧力を避けられます

「小型犬はハーネス、大型犬は首輪」といった分け方をよく見かけますが、体格で決まる話ではありません。法律上の義務と、首にかかる力の研究、この2つを並べると、上の役割分担に行き着きます。以下、その根拠と、実際に選ぶときの基準を順番に説明します。

まず前提:首輪は「つけない」という選択肢がない

ハーネス派の飼い主さんでも、首輪を外してしまうのはおすすめできません。狂犬病予防法により、飼い主には交付された鑑札と注射済票を犬に装着させる義務があるからです。つける場所は、実質的に首輪になります。

加えて、迷子になったときにその場で連絡先が分かる手段は迷子札だけです。マイクロチップは読み取り機がないと確認できないので、最初に効くのは首輪についた札のほうです。災害時に離れてしまった場合も同じです。

👉 登録・注射・鑑札まわりの手続きは、こちらにまとめています:犬の飼い方と飼い主のマナー|迎える前に確認する法律上の義務と、そろえる6つのもの

散歩でリードをつなぐのは、なぜハーネスがすすめられるのか

① 首輪で引っ張ると、眼圧が上がることが確認されている

2006年に米国動物病院協会雑誌(JAAHA)に載った研究では、犬26頭・51眼を対象に、犬が首輪を引っ張ったときと同じ力を首やハーネスにかけて眼圧を測定しました。その結果、首輪で圧力をかけたときには眼圧が有意に上昇し、ハーネスでは上昇しませんでした。

研究者らは、角膜が薄い犬、緑内障のある犬、眼圧の上昇が害になりうる状態の犬は、運動時にはとくに首輪ではなくハーネスを使うべきだと結論づけています。健康な犬でただちに問題が起きるという話ではありませんが、「首を引っ張ると体のどこかに負荷がかかっている」ことは実測されているわけです。

② 気管虚脱では「首輪で引っ張らない」がすすめられている

気管虚脱は、気管の軟骨の強度が落ちて気道が狭くなる病気です。中年齢以降の小型犬に多く、とくにヨークシャー・テリア、トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズで発症しやすいことが知られています(柴犬などの日本犬や大型犬でも見られます)。

ここで正確に書いておきます。気管虚脱の原因は正確には分かっていません。遺伝や老化、肥満、高温多湿な環境、循環器・呼吸器の疾患などが関係していると考えられている段階です。「首輪が気管虚脱を起こす」と言い切れる根拠はありません。

ただし獣医師監修の解説では、予防・悪化防止の項目として「気管を圧迫・刺激すると咳が出やすくなるため、首輪にリードを付けてぐいぐい引っ張るのは良くない。気管を圧迫しにくい胴輪(=ハーネス)を使用する」と明記されています(出典:アニコム損保「犬との暮らし大百科」獣医師監修)。すでに咳が出ている犬なら、なおさらです。

※乾いた咳、「ガーガー」という呼吸音、興奮したあとの息苦しさなどがあるときは、道具を替える前に動物病院で診てもらってください。咳をしている様子を動画で撮っておくと診察の参考になります。

ただし、ハーネスも万能ではない(ここは正直に書きます)

ハーネス推しの記事はたくさんありますが、デメリットまで書いてあるものは多くありません。研究で分かっていることを2つ挙げます。

肩の動きは、どのハーネスでも狭くなる

2019年に英国の獣医学誌 Veterinary Record に載った研究(犬9頭)では、トレッドミル上の歩様を撮影して肩の伸展角度を測りました。結果はハーネスを着けない状態に比べ、どちらのタイプのハーネスでも肩の伸展が有意に狭くなるというものでした。

しかも興味深いことに、「非制限型」として売られているY字型のほうが、胸ストラップ型より肩の動きを制限していました(歩様で2.6度、速歩で4.4度)。「非制限」「動きを妨げない」という売り文句は、そのまま受け取らないほうがよいということです。ただし9頭の小規模な研究なので、これだけで結論を出すのも早計です。

背中でつなぐハーネスは、引っ張りを強めることがある

リードの接続位置でも挙動が変わります。背中側でつなぐタイプ(バックフック)は、首輪より強く長く引っ張ったという報告があります。犬にとって楽な姿勢で体重をかけられるためだと考えられています。

そのため、引っ張り癖が悩みなら、胸側でつなぐタイプ(フロントフック)を選びます。

引っ張り対策の道具、どれが効くのか

2024年に PeerJ に掲載された研究では、犬23頭を4種類の道具(平首輪に近いマーチンゲール/フロントフックのハーネス/樹脂プロング/金属プロングカラー)で各5分間歩かせ、リードにかかる力をひずみゲージで実測しました。

  • マーチンゲール(=ほぼ平首輪)で最も強く引っ張った。他の3つはいずれも有意に引っ張りが少なかった
  • 他の3つの間には、統計的に有意な差はなかった。つまり金属プロングカラーが、フロントフックのハーネスより優れているという結果は出ていない
  • ストレス関連の行動指標では、道具による明確な福祉の悪化は確認できなかった(ただし著者は、統制された環境での5分間の歩行なので、実際の散歩に一般化することには慎重であるべきだと注意しています)

実用的な結論はこうなります。引っ張りを減らしたいなら、痛みで抑える道具(プロングカラー、チョークチェーン)を使う必要はありません。フロントフックのハーネスで同等の効果が期待できます。当サイトは、痛みや苦しさで行動を抑える道具はすすめません。

フロントフックのハーネスの一例:胸の前でリードをつなぐ定番の製品。SS〜XLとサイズ展開が広いので、下の「基準1」のとおり胸囲を測ってから選んでください。

フロントフックの犬用ハーネス

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選ぶときの3つの基準

基準1:サイズは「測ってから」買う

ハーネスの失敗で一番多いのがサイズです。胸囲(前肢のうしろで胴の一番太いところ)と首囲をメジャーで測り、商品ページのサイズ表と照らしてください。犬種名だけで選ぶと、同じ犬種でも体型差で合いません。

装着したあとの目安は「ベルトと体の間に指が2本すっと入る」くらいです。きつすぎると擦れ、ゆるすぎると抜けます。

基準2:抜けにくさを確認する

ハーネスの事故で怖いのは、驚いた拍子に後ろ向きに抜けてしまうことです。とくに首が細く頭が小さい犬種(イタリアン・グレーハウンド、ウィペット、柴犬の一部など)は抜けやすい傾向があります。

  • 胴に回すベルトが2本あるタイプのほうが抜けにくい
  • 装着後、後ろにゆっくり引いて抜けないかを家の中で確かめる
  • 不安なら首輪とハーネスの両方にリードをつなぐ(2点接続のリードや、カラビナで首輪にも通す方法)。片方が外れても止められます

基準3:着けやすさは続けやすさに直結する

頭からかぶせるタイプは、顔まわりを触られるのが苦手な犬だと毎回ひと苦労です。脚を通さず、体に巻いてバックルで留めるタイプのほうが、そうした犬には現実的です。「良いハーネスだけど装着で毎回もめる」なら、散歩の回数自体が減ってしまいます。

首輪のほうを選ぶ基準

常時つける身分証としての首輪は、軽さと安全性で選びます。

  • 軽いこと。鑑札・注射済票・迷子札を下げるので、首輪自体は軽いほうがいい
  • 幅は細すぎないもの。細いと力が一点に集中します
  • 札が鳴りすぎないようにまとめる(音を嫌がる犬がいます)
  • 室内で長時間つけっぱなしにするなら、引っかかったときに外れるセーフティバックル付きも選択肢。ただし散歩の牽引には使わない
  • チョークチェーン・プロングカラーは選ばない。上の研究のとおり、引っ張り対策として他より優れているという結果は出ていません

迷子札の一例:首輪に直接留める着脱式で、揺れて音が鳴りにくいタイプ。名前と連絡先を刻印しておけば、保護してくれた人がその場で連絡できます。

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よくある質問

Q. 結局、散歩は首輪とハーネスどちらにリードをつなぐ?

A. ハーネスです。首輪は鑑札・注射済票・迷子札をつけたまま残し、リードはハーネス側につなぎます。抜けが心配な犬は、両方につなぐと安心です。

Q. 大型犬でもハーネスでいいですか?

A. 問題ありません。体格ではなく「首に力をかけない」という考え方で選びます。力の強い犬ほど首にかかる力も大きくなるので、むしろハーネスの利点が出ます。ただし体重のある犬は制御そのものが課題になるため、フロントフックのものを選び、必要なら訓練士に相談してください。

Q. ハーネスだと引っ張り癖が悪化すると聞きました

A. 背中側でつなぐタイプについては、そう報告されています。胸側でつなぐタイプなら、研究では首輪より引っ張りが少なくなっています。「ハーネスがダメ」ではなく「つなぐ位置の問題」です。

Q. 子犬はいつから着けられますか?

A. 散歩デビュー前から、家の中で短時間つけて慣らすところから始めます。いきなり外で着けると、道具そのものを嫌いになります。なお子犬は体格が変わるので、最初から高価なものを買わず、調整幅の広いものを選ぶほうが無駄になりません。

Q. 伸縮リード(フレキシリード)はどうですか?

A. 道具の良し悪し以前に、使う場所を選びます。交通量のある道や、人とすれ違う歩道では長さを固定できる通常のリードのほうが安全です。伸ばした状態で急に走り出すと、止まった瞬間に強い衝撃がかかります。首輪につないでいれば、その力は首にかかります。

まとめ

  1. 首輪は常時つける。鑑札・注射済票の装着は法律上の義務で、迷子札もここにつける
  2. リードはハーネスにつなぐ。首輪を引っ張ると眼圧が上がることが実測されており、気管虚脱でも「首輪で引っ張らない」がすすめられている
  3. ハーネスは胸側でつなぐタイプ(フロントフック)を、胸囲と首囲を測ってから買う。ハーネスも肩の動きは狭めるので、万能ではないと理解しておく

道具を整えたら、次は毎日の体調管理です。関連記事もあわせてどうぞ。

出典

  • Pauli AM, Bentley E, Diehl KA, Miller PE. “Effects of the application of neck pressure by a collar or harness on intraocular pressure in dogs.” Journal of the American Animal Hospital Association, 2006; 42(3): 207–211.
  • Lafuente MP, Provis L, Schmalz EA. “Effects of restrictive and non-restrictive harnesses on shoulder extension in dogs at walk and trot.” Veterinary Record, 2019; 184(2): 64.
  • Johnson A, Wynne CDL. “Comparing efficacy in reducing pulling and welfare impacts of four types of leash walking equipment.” PeerJ, 2024; 12: e18131.
  • アニコム損害保険「犬との暮らし大百科」獣医師監修「犬の気管虚脱について。原因や対処法、予防についても解説」
  • 狂犬病予防法(鑑札・注射済票の装着義務)

この記事は best-dogfood 編集部が、公開されている研究・獣医療情報をもとに構成しました。記載内容は2026年8月時点のものです。愛犬の体調に不安があるときは、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。